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「どうして彼は泣いているんだ?」と、小さな緑色のトカゲが、学生のそばをしっぽを宙に持ち上げて走り抜けながら尋ねました。

「一体、どうして?」と、日の光を追い掛けて飛び回っていたチョウが言いました。

「一体、どうしてかな?」と、ヒナギクがお隣に、静かな低い声でささやきました。

「彼は赤いバラが欲しくて泣いているの」と、ナイチンゲールが言いました。

「赤いバラが欲しくて?」、彼らは叫びました。「何てまた、ばかげたことを!」と。そして、ちょっと皮肉屋なところのある小さなトカゲは、たちまち笑い声を上げました。

ですが、ナイチンゲールは学生の悲しみの秘密がよく分かっていたので、静かにカシの木に止まり、愛の神秘について考えました。

突然、彼女は飛び立つために茶色の羽を広げ、空へと舞い上がりました。木立ちの間を影のように通り抜け、影のように滑らかに庭を横切りました。

小さな草地の真ん中に美しいバラの木が立っていたので、それを目にした彼女は、そこまで飛んで行って、1本の小枝に止まりました。

「赤いバラを下さいな」と、彼女は叫びました。「そうしたら、あなたに最高の歌を歌ってあげる」

けれど、木はかぶりを振りました。

「私のバラは白よ」と、その木は答えました。「海の泡のように白く、山の雪よりも白いの。だけど、古い日時計の周りに生えている兄のところへお行きなさい、そうすれば、もしかしたら兄が、あなたの欲しい物をくれるかもしれないわ」

そこでナイチンゲールは、古い日時計の周りに生えているバラの木まで飛んで行きました。

「赤いバラを下さいな」と、彼女は叫びました。「そうしたら、あなたに最高の歌を歌ってあげる」

けれど、その木もかぶりを振りました。

「私のバラは黄色だ」と、その木は答えました。「こはくの玉座に就く人魚の髪のように黄色く、鎌を持った草刈りがまだやって来ていない草地に咲くラッパスイセンよりも黄色い。
だが、学生の部屋の窓の下に生えている兄のところへ行くがいい、そうすれば、もしかすると兄が、おまえの欲しい物をくれるかもしれない」

そこでナイチンゲールは、学生の部屋の窓の下に生えているバラの木まで飛んで行きました。

「赤いバラを下さいな」と、彼女は叫びました。「そうしたら、あなたに最高の歌を歌ってあげる

けれども、木はかぶりを振りました。

「私のバラは赤だ」と、それは答えました。「ハトの足のように赤く、海原の大きな洞窟の中でゆらゆら揺らめいている、巨大な扇のようなサンゴよりも赤い。
だが、冬が私の葉脈を凍えさせ、霜が私のつぼみを摘み取り、嵐が私の枝を折ってしまった、だから今年は、一つもバラを付けはしないのだ」

「私が欲しいのは、1輪の赤いバラだけなのよ」、ナイチンゲールは叫びました。「たった1輪の赤いバラ!手に入れられる方法は何もないの?」

「方法はある」と、バラの木は答えました。「しかし、あまりに恐ろしいので、あえて教えようとは思わないのだ」

オスカー・ワイルド 「ナイチンゲールとばらの花」


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